新しい働き方名鑑《Vivid UP Life》Vol.4 ブレないデザイン・イラスト制作への熱意|次のキャリアに必要なこととは?イラストレーター絵馬さん
Vivid up Life ~ボクらの働き方~
「Vivid up Life」とは「生き生きとした人生」という意味で、転職や独立など働き方を通して人生を前向きに変えた人にスポットを当てて、人生ストーリーや好転したきっかけを聞いて、見ていただいた方に前向きに将来を歩んでもらいたいというインタビュー企画です。
イラストレーター&作家
絵馬(emma)
福岡生まれ、就職を機に関西へ。大学生の頃から好きなデザインを邁進中。現在は会社員をしながら、フリーランスとして作家活動もするイラストレーター&アーティスト。
迷ったときにはワクワクする方へをモットーに、紆余曲折を経ながらオリジナリティーを突き詰める行動派。明るくほわっとしたキャラクターで、周りから愛される親しみやすい一面もある。
母の言葉を胸に一歩ずつ新しい道を突き進み続けており、「次はどんなことをするんだろう?」と今後の活躍が楽しみになる個人作家。
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Twitter:@iemma_to_z
Instagram:@iemma.to.z
ポートフォリオサイト:https://iemmatoz.com/
大学時の卒業制作でも広告デザインを研究。卒業後も現在まで十数年間、制作現場を渡り歩いてクリエイティブなことに情熱を注いできたイラストレーター&アーティスト 絵馬(emma)さん。
積極的にチャレンジする姿勢の裏には、どんな経験があるんでしょうか?一緒に探っていきましょう。
絵馬さんが経験した人生の好転ポイント
- 2社目で仕事の挫折から、やりたいこと&働く姿勢を改めて考える
- 「後悔しない生き方をしてね」という母の言葉
- 自分のことを知ってもらうために積極的に発信&イベント参加
福岡を飛び出して関西へ!好きなクリエイティブな世界を目指して
-まず、イラストやフリーランスに興味を持った経緯を教えて下さい。
母がフリーランスで画家やイラストレーターをしていて、幼少期からイラストやフリーランスは、身近にあるものだったんです。私が3歳のときに双子の弟と一緒に連れて、海外で個展をするようなアグレッシブな母で(笑)
そんな母の仕事を見てたので、フリーランスの楽しさも、厳しさもなんとなく感じ取っていました。
-現在はメーカーでWEBデザイナーとしてお仕事をされながら、個人でもイラストの仕事していますよね。クリエイティブ関係の仕事はいつごろからされているんですか?
10代のときに、キャラクターデザインをやりたいなって思ってて。大学生のとき、就活でも文具メーカーやキャラクターのデザイン会社に応募してたんです。
大学の卒業制作でも広告を研究して、架空の広告デザインをいくつも製作するくらいデザインはその当時から好きでした。
そのとき、絵本作家になりたいなとも思ってて。当時、京都で開催してた絵本講座に「どうしても行きたいー!」ってなって、関西の会社に就職しようと決めました。
それで京都の会社で就職が決まって、地元の福岡を離れて関西に来ました。
-絵本講座のために福岡から関西に出てくるなんで、絵馬さんもアグレッシブですね(笑)
紆余曲折を経て出会えた!自分らしい働き方ができる会社
–それからずっと同じ会社で働いているんですか?
いえ、今の会社で3社目なんです。
最初に勤めてた会社は、太陽光発電に関するソフトウェアやサービスの会社で。Webコンテンツや販促物のイラスト、デジタルコンテンツの画面のUIデザインとか、デザインに関することは何でもやるって感じでした。
その当時は、FLASHコンテンツが結構流行ってたり、動きのあるインタラクティブなコンテンツっていうのがすごい全盛期で。 Kinect(キネクト)とかプログラミングを使ってイラストが動くとか、ちょっとゲーム性のあるコンテンツとかも流行っていたんですけど。
会社でも、そういう動きのあるコンテンツを扱ってたんです。業務で触れていくなかで、こういうの自分で作れたら、すごい面白い新しいことできそう!って思ったらワクワクしてきて。
それでWeb業界に転職したいと思い始めて。プログラミングとかWeb デザインのスキルを身につけるために会社に通いながら1年間、専門学校に通いました。
6年間勤めた1社目を辞めて、Web制作会社に転職しました。
苦節を乗り越えて、自分に合った会社選び
-イラストやデザインの仕事から、Web制作会社に転職とは急展開ですね。実際にWebに携わっていかがでしたか?
Web業界未経験で初めてのことばっかりだったのに「どんどん提案していいよ」って言ってもらえて提案書を作ったり。コンテンツのプレゼンまで行かせていただいたり。
楽しかったし、Web デザイナーとしての経験もすごい積めたんですけど、忙しくて終電で帰ることも多くて。半年後くらいから、じん麻疹が出たり…だんだん体力とメンタルがついていかなくなっていって。1年くらいでドロップアウトしちゃいました。
「福岡から関西に出てきて、私何してんだろう…」「何がしたかったんだろう…」と考えるようになって、いったん立ち止まって考えてみようと思ったんです。
次の転職先が決まるまで半年ほどかかったんですけど。自分らしい働き方とか、やりたいことの優先度の付け方とかをしっかり考えてから転職しようと思ったんです。それで今の会社に就職しました。
今は日用製品を扱っているメーカーで、デザイン関係の仕事をしています。ワークライフバランスを尊重する会社で、自分の裁量で進められる業務も多くて働きやすい会社です。フリーランスでイラストを描いていることも、副業として許可をもらっています。
–そんな大変なことを経験されていたんですね。そんな経験をして、まだ今でもデザインやイラストの仕事をしているのはなぜなんですか?
1社目も2社目もずっとクリエイティブ関係の仕事をしてきて、いろいろありましたけど、やっぱりデザインやイラストを制作していることは楽しくて。
デザインやイラストの制作はずっとやっていたいなって思ったんです。
原点、初心を思い出して後悔しない生き方へ
–最近は作家活動もアグレッシブな活動になっていますよね。
ずっと絵本を作りたいと思っていたので、1社目に勤めているときから、イラストレーターの雑誌に自作のイラストを描いて応募していたんです。ちょっとは入選していて、毎回一喜一憂していましたね(笑)
いったん立ち止まって考えてみたときに初心にかえったというか…、イラストや絵本を描きたいという、関西に出てきたときの気持ちに変わりがなかったんですよ。
今まではそのときに興味があることにフラフラ向かっていたんですが、3社目の転職活動をする前に考えを整理したことで、今の会社に勤めることもできたんだと思います。
-いろいろあった結果、原点回帰されたんですね。
そうですね。
あと、おととし母が病気で亡くなったんですが、亡くなる3ヶ月前に「後悔をしない生き方をしてね」と母に言われたんですよ。
思い返すと、仕事が忙しいから、時間がないからと言い訳して、今までやりたいことも先延ばしにしてたなって。母の言葉がきっかけで、もっと積極的に動いていこう!という決心がつきました。
-素敵なお母さんですね。お母さんご自身も後悔しない生き方をしようとアグレッシブだったんでしょうね。
-絵馬さんにとって「後悔しない生き方」ってなんだと思いますか?
好きなイラストや絵本で、自分でしか作れない、生み出せないものを世の中に残したいですね。ミッフィーとか、昔からずっと愛されているキャラクターを見ていて、自分でしか残せないものを作りたいと思ったんです。
イラストは将来に渡って残せるものになるんじゃないかと思っていて。イラストを軸にして、絵本やアニメーションを作りたいですね。
-絵馬さんはオリジナリティーのある魅力的なイラストを描きますよね。昔からオリジナリティーのあるイラストを描いてたんですか?
いえ、そうではないんです。
最初はたくさんの人に必要とされることを意識して、必要とされやすいモノクロ線画を中心に描いていました。
実際にお仕事もいただけたのですが、どこかの誰かに似ているタッチになってしまってて「使われやすさ」と「自分らしいオリジナル画風」のバランスの取り方に悩んでしまって。
それでイラストレーターのプロにイラストを見てもらえる講座があったんで、そこに通いました。
本当にやりたい仕事の方向性が曖昧だったな、自分が描きたい画風を100%出し切ってないなって。プロの方からアドバイスを受けるうちに気づかされました。
いったん、たくさんの人に必要とされるという意識は忘れて、自分らしいオリジナル画風を突き詰めることにしました。
-悩んだときに人からアドバイスを貰うって大事ですね!それから具体的にどう動いていったのですか?
先程のプロの方から「絵馬さんは迷っているように見えるから《こうじゃなきゃいけない》という決めつけを取っ払って、描き続けて周りの反応や意見を聞いたら良いんじゃない」というアドバイスをいただいたんです。
そのアドバイスをいただいて振り返ってみると、私は何でも決めつけて《こうじゃなきゃいけない》と思いがちだったなと感じました。
前に在籍していた会社でも上司に「自分がどう良いと思っているのか?どう思って作ったのか?」と自分の作ったデザインに問われて答えられないことがあって。
たくさんの人に求められるものではなく、私は自分の好きなものってなんだろう?って考えることにして。
自分の好きなイラストは海外のカラフルなもので。映画や絵本、尊敬する人は「世の中の何かを変えていこう」というアンチテーゼな考えを持っている人や世界観が多かったんです。
そういう絵柄や世界観を参考にして、今私が描いているイラストが出来上がりました。
※アンチテーゼ(独: Antithese, 英: antithesis)とは、ある理論・主張を否定するために提出される反対の理論・主張である。|引用元:Wikipedia「アンチテーゼ」
それから、好きなこと、やりたいこととか、自分のことを知ってもらうことも大事だと思ったので、SNSの投稿やイベントの参加することにも積極的にチャレンジするようになりました。
私の活発な活動を見てくれた人が「絵馬さんってこんなことできるんだね」「頑張っているね」と声をかけてくれたり、仕事をいただけるようになって。
イベント(クリエイター祭り)のロゴを作ったんですが、それを見た人から「フリーフォントのイラスト書いてみない?」と声をかえてもらい、しっぽり明朝というフリーフォントのメインキャラクターを描かせていただくことになったんです。
-SNSを見ているだけでも、積極的に活動されている絵馬さんの様子が分かりますよね。最近もデザフェスという展示会に出られていましたよね。
そうなんです。同じイラストレーターのhachimitsuさんと共同でデザフェスに出展して。アクリルキーホルダーやポストカードとか販売していたんですけど、お客さんの反応が目の前で見えたのは良かったです。
私のイラストを世の中に受け入れてもらうためには「もっとこういう作品を作った方が良いな」「もっと世の中のニーズやトレンドを知っておかないといけないな」と考えるきっかけになりました。
デザフェスにはSNSのフォロワーさんも来てくださって、「絵馬さんのイラストが好き」と言ってくれる人もいて自信になってます。
自分が良いと思ったものを、他の人が見ても良いと思ってもらえる。自分が1から作った作品をお客さんに届ける機会を経験して「自分が世の中と直接つながっている」という会社だけでは経験できない充実感を得ました。
自分の人生は自分だけのもの|死ぬときに満足する生き方はなんだろう?これからも突き進む絵馬さん
-行動的な絵馬さんですが、今後やってみたいことはありますか?
いつかは絵本を描いてみたいと思っているのですが、今は動画・短編アニメーションをやりたいですね。海外の3〜5分くらいのショートストーリーが好きでよく観ていていて。
あと、ミュージックビデオもやってみたくて、楽曲作っている人と繋りたいですね。
デザフェスではhachimitsuさんと出展したり、LEMさんにグッズデザインをしてもらったりして。他のクリエイターさんと組むと発見があって、ひとりでやるより発見が大きいです。
人と組むことで自分の力を発見、相手のいいところも取り入れられますからね。
-まだまだやりたいことがあるんですね!なぜそんなにやりたいことが出てくるんですか?
自分の人生は自分だけのもの、誰も責任を取ってくれない。誰かのためにするんじゃなくて、自分や自分の人生を大事にしよう。全部自分のためになることをしようと決めたんです。
私も迷うときもあるんですが、迷った時は選択肢が増える方を選ぶことにしているんです。人生は自分だけのものなので、後悔しないように少しでも良い方向に進めるようにしています。
変えられないこともあるだろうけど、ちょっとしたことから自分でも変えられることを変える。一気に大きく変えなくても、一歩ずつでも何かを変えようとすることが次のキャリアにつながると思うんです。
特に今はコロナ禍で人に会えない、行きたいところに行けない状況で難しいんですけど。こんなときだからこそ、自分に正直にいられるかが大事ですよね。
編集者・堀江の一言
2021年クリエイター祭りでメインビジュアルを担当することに決まった絵馬さん。あがきながらも、一歩ずつ着実に前進する姿は美しいです。
よくある例えで「バットを振らなければボールに当たらない」という言い方がありますが、絵馬さんを見ているとその言葉を思い出しました。大当たりをするわけではないですが、泥臭くてもバットを振り続けて着実に積み重ねているという感じがしました。
絵馬さんのこれからの活躍も楽しみです。
※この記事は、2021年7月現在の情報を元に作成しております。
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