知名度なし・予算なしでも大手競合にも負けない!ライフネット生命に見るベンチャーの戦略

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今までは、あまり生命保険でインターネットによる見積もりをするということはなかった。しかし、社長兼COO岩瀬大輔と会長兼CEO出口治明によって、インターネットで契約するサービスの仕組みを作った。今までの保険業界に新しい風穴を開け、一躍注目をあびることとなる。

今では、このようなCMも流れて、みなさんも知っている人も多いだろう。しかし、もちろんの話ではあるが、最初から知名度があったわけではない。皆さんもご存知だと思うが、保険業界には「日本生命」や「ソニー生命」、「明治安田生命」など昔から揺るがない大手が存在する。

ライフネット生命は
「知名度なし」
「予算なし」
「先行する大手競合がある」

という状態から保険業界に参入した。

皆さんなら、このような状態で大手のいる業界に参入しようと考えるだろうか。多くの人が『NO』と言うだろう。勢いだけでは市場を開拓するのは難しい。

その中で、ライフネット生命はいかに知名度を上げてブランド力をつけていったのか。実績がなくとも大手と戦える方法とは何だろうか。ライフネット生命の戦術から、実績に頼らない市場の開拓、勝算を見出す方法を紐解いていく。

保険業界の現状

男性24.1万円
女性18.2万円
1世帯あたり41.6万円

これは生命保険文化センターが実施した「生命保険に関する全国実態調査」(世帯調査)で算出された個人年金保険の保険料を含む年間払込保険料の結果である。

生命保険というは車のように数年で払い終えるというものではなく、多くの人が加入時から20年から30年払う。生命保険は、生涯を通じて1000万円以上支払うものであり、住宅についで人生で2番目に高い買い物だとも言われている。

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1世帯あたり41.6万円で、全体の80%以上が加入。
40兆円とも言える、とても大きな市場である。

しかし、保険業界は既に飽和状態
何十社という会社がひしめき合っており、新規参入で売上を上げるのは容易なことではない。戦後、独立系としては新規参入がなかった生命保険業界で、74年ぶりにライフネット生命は新しい風穴を開けた。

これほど新しい商品やサービスが生まれる時代の中で74年間も新規参入がないということは、多くの人が勝算のない業界だと思ってきたからだろう。

大手を覆す戦略

74年間、新規参入がないような業界は大きな市場の変化もなく、大手が殿様事業をやっていることが多い。現状、パブルを境に景気が落ちているのにかかわらず、保険の料金体系はあまり変わっていない。

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「平成24年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」

現代の平均的な夫婦は、共働きをしてやっと年収300~400万円。役職のないサラリーマンが、ひとりで数百万を稼いていた時代は今や昔の話だ。年収300~400万円の家計で40万円を超える保険料は、大変大きな支出である。

そこでライフネット生命は「保険料を半分にして、子育て世代を応援したい」と理念を掲げている。

社会に現状をとらえた戦術

「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」ダーウィン

時代や社会の変化に合わせて、今までの保険業にはなかった新しい戦術を繰り広げていった。まず、先述したように年収が低い世帯が多いので、価格改革を起こし保険料を下げることを念頭に置いた。

人件費を下げる
様々な業界でオートメーション化など、価格改革には人件費を下げる戦術をとられる。例外なく、ライフネット生命も人件費を下げる戦術をとった。インターネット直販と提供するサービスを厳選することで、有意的な価格競争力を持っている。

「20代から40代の子育て世代が、安心して子供を産み育てることのできる社会」
価格改革を起こしたのは、ただ利益を上げるだけが目的ではない。20代から40代の若い世代に向けてのメッセージが込められている。「少子化」の原因は収入の低下であると考え、保険料を下げることによって安心して子供を産んでもらいたいと。

業界と世間のニーズの流れ

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ライフネット生命 ホームページより

80年代は、景気も右肩上りで貯蓄傾向が高かった。そのため、消費者の物的ニーズが高く、新商品が次々と売れた時代だった。業界も「保険のおばちゃん」と言われる会社に専属する生保レディが主流であった。

90年代に入り、携帯電話やパソコンによる情報過多の時代となる。消費者の志向や価値観が多様化し、それに合わせて顧客に合わせてきめ細やかな商品を提供する必要が出てきた。業界も今までのやり方では、主に若年層による新規顧客を開拓することは難しくなっていた。

そして、21世紀は消費者の目が肥え、今まで以上に企業やブランドの姿勢を見るようになった。同社も今までと同じようにしていたら、ここまでの知名度とはなっていなかったであろう。

メディア戦略とリアルな広報活動によるハイブリッド

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冒頭のCMやインターネット広告、SNSによるメディア戦略により、若年層を取り込んだ。インターネットによる販売により若年層にも親しみやすく、複雑・難しいと思われがちな保険に対する思考のハードルを下げた。60歳を超える代表取締役会長兼CEO・出口治明氏もTwitterやFacebook、ブログで発信を続ける。

メディア戦略のメリットとデメリット

メディア戦略のメリット

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LTV(ライフタイムバリュー)=顧客生涯価値
ライフネット生命の新規顧客の年齢層をみると、20代と30代で70%以上を占めている。若年層を取り入れることで、一人あたり生涯にわたって同社に支払う金額が多くなる。特に生命保険は一度契約すると、契約者が死亡するまで解約することはない。20代で契約すると40年以上契約し続けるケースも少なくない。

ライバルがいない
今までは生命保険に興味があっても、資料請求やホームページを見てもサービスの仕組みがわかりにくかった。結局、わざわざ窓口に出向くという億劫さを伴うことが多い。しかし、インターネットからの申込みをすることにより、ホームページも分かりやすい作りになっている。

それぞれのライフスタイルに合わせて問い合わせやホームページの見積りも24時間できるようになっている。このような体制は他の会社では少ない。顧客が自主的に調べやすい環境を整えることで、熱い支持へとつながる。

メディア戦略のデメリット

直接顔を合わせないこと
つまり、見えない相手に対して信頼感を得られないということ。
冒頭で記載したように生命保険は、住宅に次いで2番目に高い買い物となる。そのような買い物をインターネットで注文するだろうか。住宅や車であれば、お店に行って実際のものを見てから決める。今では、ライフネット生命の知名度も高いが、最初はそうではなかった。

信頼感を勝ち取った全員マーケティング

経営者による行脚活動

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冒頭にも先述した創業者でもある社長兼COO岩瀬大輔と会長兼CEO出口治明も全国に出ていき、公演を行い自社のことについて話をする。

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出口治明のTwitterを見ても「〇〇へ行ってきます」という、公演に出かけるツイートが多い。創業者である自分たちをブランド化することにより知名度を上げると心がけているのだろう。書籍の出版も多くされており、露出を多くすることで消費者は会社のことが分かりやすく、顧客との信頼感が増す。

従業員全員がマーケッター

従業員が自分の会社のビジョンや価値観を理解し共有している会社は少ないと思う。ライフネット生命は、従業員にそれらを理解させて、従業員一人ひとりがマーケッターとなり、自社のPRを円滑させることをした。

これを「従業員」をターゲットとしたマーケティング=インターナル・マーケティングという。

価値観や目標を従業員が共有することで、各自が自分の言葉で、自社のことや商品・サービスについて伝えることができる。自身の業務の意義や役割を実感することもでき、社内のコミュニケーションや業務にも好循環をもたらす。

また、創業メンバーであれば、企業がどんな想いで事業を行っているかは共有できるが、新入社員となるとそれらの意識は薄れていく。企業の想いを共有できていないと、比例して売上にも悪影響を及ぼす

会長の出口治明は、従業員に向けて定期的にメールを送っている。そこには「なぜ、今ライフネット生命ではこんな行動が必要なのか」「こういうことはやるべきではないのか」という、「なぜ」について書かれている。40年以上、保険業界に席をおいている出口だからこそ、会社と従業員の想いに一体感をもたせる重要性を理解しているのだろう。

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従業員も自主的に行動をして、自社の広報活動を行っている。

1.従業員全員でチラシ配り
自社の認知度向上が目的であることはもちろん。従業員の中には、普段の業務の中で外部の方と接する機会のない部署に属している人もいる。内部だけの情報であると閉塞感や業務の本質を理解できないなど、モチベーションにも影響する。

世間の人たちが、自社のことをどのように見ているのかが理解できる。これを理解することにより、顧客に対してより良いサービスを生み出そうと従業員自らが考えるようになる。社長の岩瀬大輔と会長の出口治明も、自ら世間の声を聞くため街頭に出て従業員と一緒にチラシを配ることもある。

2.ソーシャルメディアでの情報発信
開業前から4年以上、従業員ブログをリレー形式で運営している。インターネットによるサービスを提供していると、顧客は会社のことや従業員について分かりにくい。会長や社長は積極的に露出をしているが、従業員の声を世間の人が聞く機会は少ない。

このブログには、ライフネット生命ではどんな人が働いているのかと、顧客に知ってもらう目的がある。それにより契約に結びつける安心感を提供している。

また、従業員が自らの言葉で発信する場を持つことでチラシ配り同様、一人ひとりが世間の人の目を意識したり、お客の反応を感じることができる。従業員同士の考え方の共有や他部署の活動も分かり、コミュニケーションの活性化にもつながっている。

3.豊富な部活動
ライフネット生命の社内には、フットサル、ランニング、トライアスロン、ヨガ、ゴルフ、サッカー、子育て部、とんかつ部など、50以上の部活がある。これらの部活では、会社のロゴの付いたTシャツを着て大会などに参加している。

これにより外部に対して自社の認知度の向上を図るとともに、部署を超えた従業員の繫がりと一体感を生み出している。

ライフネット生命に期待する今後の展望

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契約数を年々伸ばしている同社ですが、新規顧客獲得数を平成12年度を境に減少傾向にある。これは同社が保険をもっと分かりやすくしようと心がけた結果、サービスを厳選しすぎたことが多様化する時代に対応できなかったことも原因だと言われている。

また、インターネットに集中したことが、裏目に出たのではないだろうか。ターゲットを若者にしたことで、今まで新規顧客や信頼感を獲得していった。しかし、若者世代に保険の大事さを教えるべきだった。

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生命保険には入ろうと思う時というのは、多くは結婚や子供など家族ができた時であろう。上記グラフは、国勢調査による年齢別未婚率の推移 (男性)だが、ここ50年でそれぞれ30%前後、未婚率が上昇している。

Inovation

要するに、ターゲットとなるマスに限界があるのだ。Web戦略と公演やチラシ配りなどリアルな広報活動により、イノベーター・アーリーアダプター層は取り込んだ。もう、ひとつのゴールには達していると言ってもいい。

次のステップを目指すべき時期だ。その次のステップに超えるためのキャズムをいかにして超えるか、戦略が問われる。ライフネット生命にとって重要な時期になってきているのだ。

どんなビジネスでも売上には限界が生じる。その限界に達した時に、時代の変化を読み取り今までのやり方をとらわれずに新しい目標を立てるようにしよう。成長するためには時代の編を捉え、抗うことなく新しい発想を生み出すことがビジネスの進化論と言っていいだろう。

この記事を書いた人

堀江晃一

堀江晃一

・WEBコンサルタント
・フリーランス・副業など働き方支援
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1983年生まれ。大阪府東大阪市出身。
印刷業界の営業やパソコンメーカーのカスタマーセンター、SEO・WEBライティング業などを経て、30歳で独立。挫折を経験し、人が集まる仕組みや経営を勉強するため、シェアハウス・コワーキングスペース運営会社のWEB担当やコンサルティング会社を経て、再び独立。
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